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博士の愛した映画

母べえ

母べえ 上映時間 132分     製作国 日本      公開情報 松竹        初公開年月 2008/01/26 ジャンル ドラマ HP 監督:山田洋次 出演:吉永小百合     浅野忠信     檀れい

総合:★★★ 内容:★★★☆ 俳優:★★★ 映像:★★☆ 感想:切ない・悲しい・泣ける 母べえの「女性の強さ」を感じる作品。 しかし、それは現代の社会進出した「女性の強さ」とはまた違った意味での強さ。 夫を信じ想い続け支えてひたむきに生きる、そして娘達を養い家庭を守る妻や母としての女性の品格。 道が逸れ始めた日本において、父べえをはじめ、世の中に流されないしっかりとした それぞれの価値観を持って強く生きる人たち。 ただ純粋で素直であるがために、世の中のつまはじきものにされてしまう。 そうさせてしまう混沌とした時代だったのが嫌になるほど伝わってきました。 吉永小百合は、凛とした強さともろい繊細さをあわせもち、常に気を張って無理してがんばっている母べえの姿がとても絵になっていました。 ただこの時代に感情を出すのは美徳とされなかったかもしれないけれど、それでも押し殺せないほどの激しい感情の一面もみせてほしかったところ。 叔母さん役の檀れい吉永小百合に負けない気品と女性の美しさが魅力的。 浅野忠信演じる山ちゃんからは、一生懸命で誠実な姿や優しさ、時折みせる男としての固い決意というものが奥底に感じられました。 また笑福亭鶴瓶演じる奈良のおっちゃんは、良くも悪くも歯に衣着せぬとても人間的な存在で観ているこちらもほっと安心させられる。 そして、「家の中に男の人がいるっていいわね」という母べえの言葉とおり、欠けた父べえの存在を補うように、家族を支えあっていく姿が印象的でした。 それでも、やはり満たされない母べえの父べえへの想い、そして戦争は容赦なく大切なものを奪い去ってしまう非情さが後半に痛く突き刺さりました。 そして、ラストにかけては、涙を誘われました。 ただ山ちゃんのラストシーンは、映像化しなくてもよかったように思いました。 話を聞いた母べえの姿を映し続けるだけのほうが、観ている側により深い悲しみを伝えられたのでは? また監督の反戦の想い、母べえの父べえを支え想い続ける気持ち、山ちゃんの無償の愛、 いろんなものが詰め込んであるだけに、ややピントがぶれて均一化されてしまった印象。 「Always 三丁目の夕日」のような古き良き時代を懐かしむのもいいけれど、戦前戦中あってのその後の日本。 思い出すのはつらい過去なのかもしれないけれど、つい何十年か前にこういう世の中であったということを、その時代を生きた人でないと、知らないことや知っているけれど忘れてしまうことは多い。 そういう意味では、別世界のような戦争映画ではなく、戦争に翻弄されてい家族を描くことによって、またその後の現代とつながっていることで、より身近なものとして思い出させてくれました。