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博士の愛した映画

イップ・マン 最終章

「拳銃は他人のものだが、拳は自分のもの」

ブルース・リーの師匠としても知られる実在の武闘家、イップ・マンの晩年期の物語。

歴代のイップ・マン

今回イップ・マンを演じるアンソニー・ウォンは、ドニー・イェンのようにカンフーできる人というイメージではなかったが、それを覆す熱演ぶり。

「グランド・マスター」で同じくイップ・マンを演じたトニー・レオンより激しく、「イップ・マン 葉問」のドニー・イェンよりも渋い。

今回のストーリーも、「イップ・マン 葉問」、「イップ・マン序章」、「イップ・マン誕生」と構成はほぼ同じ。

屋上で暮らす->弟子を取る->もめる->武官同士、師匠の対決->打ち解ける->大ボスに仲間がやられる->大ボスを倒す

毎回、同じような展開なので、もう少しひねりが欲しかった。

アンソニー・ウォン vs エリック・ツァン

中盤の見所は、やはり時代を超えたライバル、エリック・ツァンとのカンフー対決。

インファナル・アフェア」を彷彿とさせるが、子分や部下を動かす心理戦ではなく、実際に手合わせをするところが心憎い。

「イップ・マン 葉問」のドニー・イェンvsサモハン、「イップ・マン 誕生」のユンピョウvsサモハン同様、興奮させてくれるものの、見せ場はあっという間に終わってしまい残念。

素顔のイップ・マン

イップ・マンといえば、元々裕福だったが、激動の時代に翻弄されてしまう悲しい運命。

今回は、日本軍ではなく、香港経済や本土との関係に翻弄される。

それでも、師匠として、夫として、男として、父として、周りを助けながらも、助けられて生きていく、武術だけではない、人間的にも出来た男として魅力的に描かれている。

今回はいつものカンフー要素よりも、胃痛に苦しんだり、人を気遣う人間的なイップ・マンが印象的だった。

師匠と弟子

「よい師匠も少なくなったが、よい弟子も少なくなった」

師匠同士、しみじみと語りあう姿が時代の移り変わりを感じさせる。

そして、これまでいろいろとトラブルに巻き込まれてきただけに、その言葉とおり、弟子についていろいろ苦労してきたことが偲ばれる。

武館の看板をつけない理由は、弟子にしたくない人を断れるようにというのが面白い。

弟子と言えば、ブルース・リーも少しだけ登場するが、すでにアメリカで成功して凱旋帰郷した後。

観客が本当にみたいのは、やはり師弟関係で修行していたときの、イップマンとブルース・リーのストーリーかもしれない。

「武術は金では買えない」

技術だけではない、心技体がそろってこその武術、そしてグランド・マスターということを感じさせてくれる作品でした。 [cft format=0]