クロニクル
頂点捕食者
実質的に自分自身を捕食するものがいない、食物連鎖の頂点に位置する上位種のことである(wikipedia)
「ライオンがガゼルを襲っても、人間がハエを殺しても罪悪感を感じない。そこに意味がある」
カメラに向いながら、何かを悟り言い聞かせるようにつぶやく、主人公アンドリューの出した結論に驚かされる。
手持ちビデオカメラによる演出
「ブレアウィッチ・プロジェクト」「クローバー・フィールド」「パラノーマル・アクティビティ」などの映画、Youtubeをはじめ動画投稿サイトの存在で、特に珍しくなくなってきた手持ちのビデオカメラ映像での演出。
手持ちカメラだと自分自身を撮影することが難しいのが難点。
しかし、能力を使うことによって客観的にぶれずに撮影できるというしかけが実にうまい。
また手持ちカメラだけだったものが、防犯カメラや携帯のカメラなど、テレビ中継など様々なカメラの映像から構成されていく演出により、スケールの広がりが感じられる。
こうして改めてみると、街中の撮影カメラの多さに気づかされる。
ささいな発見から、能力を徐々に身につけていく様が、手持ちカメラで撮影されていることによって、投稿動画のようで日常感と緊迫感があってリアル。
若気の至りで、自分勝手に能力を使って悪ふざけする姿は、「ジャンパー」を思い出す。
注目の若手俳優
主人公アンドリューを演じるデイン・デハーン。
線が細くて弱々しい感じだが、その眼差しは芯の強さを感じさせる。
彼を見ていると、「ギルバート・グレイプ」の頃の若きディカプリオを彷彿とさせる。
「欲望のバージニア」「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 」「リンカーン」と濃厚なドラマ作品に相次いで出演しているだけに今後注目の若手俳優。
今後公開される「アメイジング・スパイダーマン2」では、旧シリーズでジェームズ・フランコが演じたハリー・オズボーン役を演じるとのこと。
またしても影がある役だが、悪役ぶりにも期待が高まる。
ダークサイドへ
家では暴力親父、近所の不良たち、学校では気持ち悪がられ、いじめられるアンドリュー。
友達もなく、どこにも居場所がない寂しさ。
能力によって自信をつけるも、やはり人から受け入れられない疎外感。
人間が成長していく上で、思い通りにいかずに抑圧された日常から、うまくいかない世の中を破壊したくなる気持ちは共感できる。
排他的になり、ダークサイドへ墜ちていく姿は、まるでアナキン・スカイウォーカー。
そんなアンドリューとは対照的に、マットに正義心が芽生えていくのが印象的。
ラストにかけてのこの2人による迫力の展開は、「ドラゴンボール」や「エヴァンゲリオン」のような日本アニメ的で実写で表現された映像に興奮しっぱなし。
一般的な作品なら、正義の心をもったマットが主人公になるところを、ダークサイドに墜ちていくアンドリューを主人公にしたのが本作の一番のみどころと言える。
そんな2人の明暗を分けたのは、育ってきた環境や周囲からの愛の差かもしれない。
大いなる力には大いなる責任をともなう。
能力と心の成長のバランス、成長過程における愛の大切さを感じさせる映画でした。
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