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博士の愛した映画

サイド・エフェクト

セックスと嘘とビデオテープ」「エリン・ブロコビッチ」「トラフィック」「オーシャンズ」シリーズなど数々の作品を世にだしてきた スティーブン・ソダーバーグ監督、最後の劇場映画。

副作用

「精神科医に通ってるというと、イギリスでは病気とみなされるけど、アメリカでは応援してくれる。」

ジュード・ロウ演じる精神科医バンクスがイギリスからアメリカに来た理由としてあげた言葉だが、精神科医や薬が、いかにアメリカでは身近な存在というものなのかがわかる。

本作は、薬の副作用をテーマにした映画。

しかし、今回の事件が薬の副作用による単なる殺人事件にとどまらず、様々な副作用を及ぼしていくところが「サイド・エフェクト」というタイトルの奥深さを感じさせてくれる。

医者と患者

冒頭の患者とのやりとりが、バンクスの真摯で患者思いの一面を描いている。

しかし、その患者思いの一面が、時には入り込みすぎて、災いに巻き込まれてしまうのが彼の弱点でもある。

薬の副作用が巻き起こす事件を発端として、その事件に巻き込まれて人生を狂わされてしまうのが、最大の副作用といってもいいかもしれない。

ジュード・ロウキャサリン・ゼタ=ジョーンズチャニング・テイタムとは違い、ソダーバーグ監督作品初参加のルーニー・マーラ

ドラゴン・タトゥーの女」のリスベットとして中性的な印象だったが、今回演じるエミリー・テイラーは女性的でとても美しい。

しかし、どこかうつろげで、影がありそうな雰囲気を醸し出している。

落差が生む怖さ

比較的淡々と描く印象があるソダーバーグ監督だが、今回はストーリーが衝撃的なため、逆にじわじわと副作用の怖さが伝わってくる。

傷ものになった主人公に対して、あれだけ和やかだった同僚や頼っていた製薬会社が、手を返したように去って行く状況。

一時期の幸せの絶頂、そしてそこからどん底に落とされた苦しみと怒り、そしてもう一度絶頂に戻りたいという欲望。

人というのは、その落差が大きければ大きいほど、その原因をもたらした相手に対する感情の副作用も大きいように感じられた。

過去の行動をみれば、未来を予見できる

彼女たちの過去と未来だけでなく、バンクス自身も過去の経験があるからこそ、今回の事件の真相に立ち向かう決心がついたように思った。

二重処罰の禁止という制限がある中、どのように「やられたらやりかえす」のか気になるところだったが、精神科医ならではの展開に驚かされる。

彼の下した判決は、死刑よりも厳しいものかもしれない。

スティーブン・ソダーバーグ監督、最後の劇場映画として、ふさわしい映画でした。

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