Dr.Cinema

博士の愛した映画

エリジウム

二極化した世界

貧富の差が二極化する世界。

貧困、病気、犯罪、戦争などが蔓延する地球。

一方で、それらとは無縁で富裕層だけが暮らす理想郷エリジウム

地球で暮らす貧困層は、「第9地区」でのエイリアン達が難民として居住させられていたものに近い。

そこは、ロボットによって、管理されている社会。

そんな自分達を管理するロボットを製造する職でありながら、失職におびえながら危険を顧みる働く姿が皮肉的。

エイリアンとサイボーグ

マット・デイモン演じる主人公マックス。

事故に遭い、放射線を浴びたことによって、余命5日の状態を完治させる機器をもとめて、エリジウムへ進入を試みる。

第9地区」では、エイリアンの体液を浴びた主人公が徐々にエイリアン化していったのがとてもユニークだった。

今回は処方される薬、体に埋め込んだ機械によってパワーアップ。

その機械は、介護支援ロボットのようでリアル。

本作のキーとなるデータを脳に転送される姿は、「マトリックス」のよう。

しかし、舞台は仮想現実ではなく、リアルな現実世界での戦い。

エリジウムの母

それに対して、地球からの不法移民を冷酷非情に取り締まるエリジウム女性防衛長官デラコート。

ジョディ・フォスターの知的さとクールさがマッチしていて、悪役として見応えがある。

しかし、その悪役ぶりを生かすことなく終わってしまったのは残念。

リジウムを子供の世代まで理想郷として守りたいというエリジウムの母的な印象も感じられた。

ウィリアム・フィクトナー演じるエリジウム市民だが、地球に滞在するエリジウムのシステム会社の社長。

ローン・レンジャー」でも悪役だったが、それとは違う清潔感ある冷酷で無駄のない印象。

この2人がエリジウムの完璧さを象徴しているかのようである。

マックスがエリジウム内に進入してからは、よくある力と力の戦いでありきたりで残念。

スーツをまとって戦う背景は、刀や梅のような花が咲き日本風。

アイアンマン2」のラストバトルを思い起こさせる。

愛と変革

見所は、自分が助かるために戦っていた主人公の心境の変化。

そのきっかけとなる幼なじみの愛する女性と病気の娘。

ただ、この2人がエリジウムまで連れて行かれる下りは、少々強引のような気がした。

同じく二極化する世界を描いたラブ・ストーリー「アップ・サイド・ダウン 重力の恋人」。 この作品と共通する面白みは、2つの世界に革命を起こすために行動するのではなく、愛する人のために起こす行動が、結果的に世界の革命につながるところ。

現実の富裕層

はっきりと二極化した上で、富裕層の象徴があれば、反感の矛先もそこに向けられる。

独裁国家のように、一部の上層部の人間が冨を独占していれば、民衆の反感を買い、革命が起こりえるのかもしれない。

しかしグローバル化する世の中で、現実には、空を見上げてみえるエリジウムのような分かりやすい富裕層の象徴的なものは存在せず、 最近の富裕層はもっと巧みに振る舞っているようにも思える。

富裕層を優遇するタックス・ヘイブンのような国が、将来のエリジウムのようになるのか、興味深い作品でした。

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