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博士の愛した映画

ミスト

ミスト THE MIST 上映時間 125分 製作国 アメリカ 公開情報 ブロードメディア・スタジオ 初公開年月 2008/05/10 ジャンル ホラー/ミステリー/ドラマ HP 監督:フランク・ダラボン 出演:トーマス・ジェーン マーシャ・ゲイ・ハーデン ローリー・ホールデン

総合:★★★☆ 内容:★★★☆ 俳優:★★★ 映像:★★★☆ 感想:衝撃的・怖い・悲しい この上ない「恐怖」と「絶望」が押し寄せてくる映画. 物語は,突然街を包み込んだ得体の知れない「霧」とその中でうごめく不気味な正体に,閉じ込められた人々が恐怖とパニックに陥っていく様子を描く. 「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」とくれば,本作もスティーブン・キング原作でも非ホラー系かと思いきや,ホラー系の「ドリームキャッチャー」という第一印象. 序盤,「ヴィレッジ」「サイン」のM・ナイト・シャマラン監督作品のような得体の知れない恐怖が描かれるが,それとは異なり前半から正体が徐々に明らかになり,人々を恐怖に駆り立てていく. これがなぜかどうしようもなく怖い. それから息子を守るという約束を誓う父親の気持ちも理解できる. 映像の描写はそこまでえぐいものでもないが,状況が理解できず先も見えず, 精神的不安が加速され言いしれぬ恐怖が押し寄せてくる. それは,物語でも人々の心理や行動にも影響してくる. スーパーに閉じ込められた人々は,様々な考えを持った様々な人種という印象. 「最後の審判」のような常軌を逸した現状と恐怖に,しだいに恐怖が怒りに変わり,顔見知りであるにも関わらず,怒りが暴力へと変わっていく. 扇動者のもとに集団による狂気へエスカレートしていく様子は,見えないテロの恐怖におびえるアメリカ国民への警告のようでもある. 個人的には,外の世界よりも内にある人間による狂気をもっと色濃く描いてほしかった. 密室での恐怖と人間の狂気を描いた作品では,「CUBE」が思い出される. しかし,本作品ではそれ以上の衝撃の結末が待っていました. それは,「グリーンマイル」で,主人公がジョンを救うのを諦めたため,罪として,生かされる苦しみを与えられたのだというラストと通じるところを感じた. 本作では,さらにそれを深めた痛烈な苦しみが劇場を包みこみました. 一見ホラー映画だけれども,「霧」の中に様々な要素が潜んだ作品でした.