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博士の愛した映画

つぐない

つぐない ATONEMENT 上映時間 123分 製作国 イギリス 公開情報 東宝東和 初公開年月 2008/04/12 ジャンル ドラマ/戦争/ロマンス HP 監督: ジョー・ライト 出演: キーラ・ナイトレイ     ジェームズ・マカヴォイ     シアーシャ・ローナン     ロモーラ・ガライ

総合:★★★★ 内容:★★★★ 俳優:★★★★ 映像:★★★★ 感想:切ない・悲しい・衝撃的 一言の重みを感じさせられる作品。 物語は、セシーリアとブライオニーのタリス姉妹、そして使用人の息子ロビーの三人で進む。 映画の前半での、ブライオニーの視点から描かれる世界と、セシーリアとロビーの視点から描かれる世界。 同じ出来事でもとらえ方によって意味が異なることを、美しくそして妖しくみせてくれる。 多感な少女のみる世界というのは、「パンズ・ラビリンス」や「テラビシアにかける橋」同様に、彼女たちの色眼鏡を通して、彼女達の空想の世界や独自の世界観に変換されるのかもしれない。 その世界の中では、自分自身は自由に創造できる神であり、すべてを知っているかのような錯覚をもたらしてしまう。 そして現実との錯綜がもたらす物語の展開は、純粋であるがゆえに美しくもあり、時に残酷な結果や悲劇を招く。 その少女時代のブライオニーを演じるシアーシャ・ローナン。 淡い恋心をよせる様や衝撃をうける様がすごく自然で無垢な印象。 悪気のない無邪気さが伝わってきました。 セシーリアを演じるキーラ・ナイトレイ。 彼女はとても美しいけれど、比較的今回は彼女の怒りや悲しみが全面に押し出され、 端正な顔立ちの綺麗さに、より鋭さがましてちょっと怖い印象でした。 最も印象的だったのは、ジェームズ・マカヴォイ。 「ペネロピ」の柔らかい雰囲気とは全く異なる筋の通った男らしさが全面に出ていました。 髪型のせいもあるかもしれませんが、ここまで役柄によって雰囲気が変わるのは、さすが役者だなと思わせてくれる。 これからの活躍も楽しみです。 美しい映像とともに始まる悲劇の前半とはうってかわって、みていてつらかったのが中盤から終盤にかけての戦争シーン。 戦争によってさらに引き裂かれてしまった二人の悲しみやつらさ、そして自分が行ったことの重大さに気づき償おうとするも、 戦争時において何をしても償えないブライオニーの苦しみが描かれていました。 戦時下のダンケルク海岸の5分半の長回しの映像は、インパクトがあるものの、 主人公達の想いよりも、戦時下の混沌さや無情さが全面にでている印象を受けました。 このままつらい戦争シーンが続くのかと思いきや、衝撃的なラストが素晴らしい。 画面からあふれ出るブライオニーの苦しみや想いには、胸を打たれました。 彼女なりにとった行動がはたして「つぐない」になったのか? セシーリアとロビーの2人の姿をみながら、見終わってからもいろいろと考えさせられます。 冒頭から全編にわたって、タイプライターの音を効果的につかったBGMがとても印象的。 そして見終わってみると、このBGMが意味するところが意外と大きかったことに、思わず感心させられました。 純粋で美しく悲しい映画でした。