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博士の愛した映画

フィクサー

フィクサー MICHAEL CLAYTON 上映時間 120分 製作国 アメリカ 公開情報 ムービーアイ 初公開年月 2008/04/12 ジャンル サスペンス/犯罪/ミステリー HP 監督:トニー・ギルロイ 出演:ジョージ・クルーニー    トム・ウィルキンソン    ティルダ・スウィントン    シドニー・ポラック

総合:★★★☆ 内容:★★★ 俳優:★★★★ 映像:★★☆ 感想:知的 ・切ない・衝撃的 真実と正義に苦しむ人間を描いた作品。 邦題の「フィクサー」という印象から、裏世界で華々しく活躍する主人公の物語を想像してしまうが、原題は、「MICHAEL CLAYTON」。 自分の今後の人生に不安を抱えるごく普通の人間として描かれている。 いつものおしゃれで余裕あるかっこいいジョージ・クルーニーとはひと味違った、人生に迷い、借金で追い詰められた弱々しい雰囲気は意外に新鮮。 個人的に最もよかったのは、アーサー役のトム・ウィルキンソン。 良心の呵責に目覚め、精神を病みながらも、自分の正しいと思うことに突き進む役柄をエネルギッシュに好演。 迷いの底にいるマイケルを導く上で大きなきっかけを与えるに値する存在感のある演技でした。 それに対するカレン役のティルダ・スウィントン。 人前での毅然とした態度と、その裏にある努力、勤勉さや必死さが印象的。 そして、追い詰められての決断にいたる彼女の状況にも、様々な重圧の中ぎりぎりの状態で張り詰めた糸が切れてしまったような人間としてのもろさにも同情してしまう。 そうしたティルダ・スウィントンの持つ気丈さとその裏で苦しむ演技がとても生々しく伝わってきました。 登場する人物たちは、完全悪でも完全善でもなく、それぞれの状況や立場において、各々の思惑があり、リアルな人間として描かれている点がとても評価できる。 そして、それを演じきる俳優陣がよりキャラクターに深みを与えてくれる。 ただストーリー展開は、時間軸をかえて、観客の好奇心を持たせているものの、内容そのものは正統派でじっくり描かれている一方で、裏をかえせばとても地味な作品。 物語のキーとなる「王国と征服」というマイケルの息子が夢中になるファンタジー小説とのつながりもいまいちすっきりと消化できませんでした。 しかし、映画後半の主人公が中心的に巻き込まれるあたりから、面白くなってくる。 ぶち切れたマイケルは、ここにきてようやくジョージ・クルーニーの本領発揮といったところ。 そして、ラストにかけての緊迫の展開。 すべてが終わった後のジョージ・クルーニーのなんとも言い難い微妙な表情が、マイケルの心情や行ったことの意味、今後の人生など様々なことを想像せずにはいられない。 内容は地味なものの、人間がしっかり描かれた作品でした。