ヒッチコック
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「サイコ」誕生までのヒッチコック夫婦の愛憎を描いた作品.
成功した夫を影で支える妻の存在. いくらでもある話かもしれないが,妻アルマ・レヴィルが異なるのは, ただひたむきに夫を支えているという自負だけでなく, 脚本家,編集技師としても才能を認められていることだろう.
夫のサポート役ではなく,世にでるチャンスを与えられたら? 誰だって自分の自由に脚本を描き,自分の名前で作品を残したいもの.彼女に共感するだろう. もし時代が違ったら,キャスリン・ビグローのような映画監督になっていたかもしれない.
妻との関係がもたらした孤独と寂しさが,おなじみの体型がもの悲しく伝わってくる.
そして,サイコのモデルとなった実在の殺人鬼エド・ゲインに心を奪われ, 疑心暗鬼になり,狂気へと変化する様は,まさにスリラー.
ヒッチコックを演じるアンソニー・ホプキンスと アルマを堂々と演じるヘレン・ミレンは,まさにハマり役.
ヒッチコック作品の女優を演じるスカーレット・ヨハンソンやジェシカ・ビールは, 5,60年代の髪型とファッションでいつもとはまた違う雰囲気で新鮮.
サイコの結末を知らせないために,原作本を買い占めるくだりは,さすがハリウッド. 次回作「鳥」にもつながるラストがおちゃめ.
夫の映画に対する才能や熱意やひたむきさを感じ,自分を必要としてくれる存在に気づく妻. 自分を支えてくれる存在に気づく夫. 「サイコ」という名作は,お互いの必要性を再認識した夫婦が作り上げた作品ということがわかる.
すべてを掌握したがると周りから影口されていたヒッチコック. しかし,全体を一番掌握していたのは妻であり, ヒッチコックの作品をふくめた人生の製作総指揮者と言っても過言ではないかもしれない.
歯車がかみ合わなくなった夫婦の関係を見つめなおすのによい作品です.
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