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博士の愛した映画

大いなる陰謀

大いなる陰謀 LIONS FOR LAMBS 上映時間 92分 製作国 アメリカ 公開情報 FOX 初公開年月 2008/04/18 ジャンル ドラマ HP 監督:ロバート・レッドフォード 出演:ロバート・レッドフォード メリル・ストリープ トム・クルーズ マイケル・ペーニャ

総合:★★ 内容:★★ 俳優:★★ 映像:★★ 感想:知的・悲しい・考えさせられる ロバートレッドフォードが,監督として,役者として,戦争について様々な角度から語る映画. 物語は,政治,マスメディア,軍隊,教育,この4つの現場にいる主人公達の1日を通して描かれる. 政治の現場からは,トム・クルーズ演じるアーヴィング上院議員. 演説やインタビューに熱弁をふるう姿は,「マグノリア」での姿を思い出させる. しかし,過去の政治の過ちを認めてはいるものの,最後まで自信満々で突き進む姿のみ. 裏にある自信の根拠や苦悩や迷いなど人間的な側面は描かれていないのが残念. マスメディアの現場からは,ジャーナリストを演じるメリル・ストリープ. 自分が行ってきたこと,そしてこれから行うことが正しいことなのか? 議員の熱弁を冷静に受けとめながらも,苦悩する姿が印象的. 戦争の現場から,マイケル・ペーニャデレク・ルーク演じるアーネストとアリアン. 国の未来を思い,現場で理想に燃える若者の姿が,痛々しく,矛盾を感じずにはいられない. そして,教育の現場からは,マレー教授を演じるロバート・レッドフォード. おそらく彼自身がこの映画で最も言いたいことなのだろう. かつての生徒アーネストとアリアンの話を中心に,世の中にあきらめを感じていた生徒を導こうとする. 政治,マスメディアを批判しつつも,一番の罪人は,無関心で何も考えず行動せず,ただ踊らされている我々である. と,さながら観客もお説教されているかのようである. ただ短時間の面談で,今時の生徒を導けるのかについては疑問が残る. それは映画全体にも言えること. 92分という短い時間で,これら4つを扱おうとすると,どうしても内容が希薄になってしまう. 言いたいことが多いせいか,言葉での説明も多く, せっかくの豪華俳優の共演もキャラクターに深みがなく不完全燃焼ぎみ. 戦争に対して無関心な我々の責任についての問題提起はよかったが, 世の中を啓蒙するには,いまひとつ物足りなさを感じました.