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博士の愛した映画

マイ・ブルーベリー・ナイツ

マイ・ブルーベリー・ナイツ MY BLUEBERRY NIGHTS 上映時間 95分 製作国 香港/中国/フランス 公開情報 アスミック・エース 初公開年月 2008/03/22 ジャンル ロマンス/ドラマ http://blueberry-movie.com/ 監督:ウォン・カーウァイ 出演:ノラ・ジョーンズ    ジュード・ロウ    デヴィッド・ストラザーン    レイチェル・ワイズ    ナタリー・ポートマン

総合:★★☆ 内容:★★ 俳優:★★★ 映像:★★★ 感想:切ない・ロマン・心温まる 失恋した時にみたい作品。 数々の失恋した人物を描いてきたウォン・カーウァイ。 今回の作品も今までの作品の要素が散りばめられた作品でした。 失恋した相手への断ち切れない想い。 「どんなものにも期限があるそうだ。」 本作品でも「恋する惑星」「天使の涙」の主人公達の言葉は生きている。 「パイナップルの缶詰」のように、「ブルベリー・パイ」であったり、「アパートの鍵」、「コイン」、「伝票」、「車」など登場人物たちの愛する相手への想いを象徴したそれぞれのアイテムが効果的に登場する。 過去の作品でも、旅に出て帰ってくる女性、そしてその場にとどまる男がいたけれど、今回は、恋に破れた主人公エリザベス中心に旅の過程がじっくり描かれる。 「その時、彼女との距離は0.1ミリ」や「2046」のように場所は同じでも時間軸であったり、彼の作品には、人と人との距離や時間の表現が多い。 今回は、失恋の旅が時間と距離で表される。 エピソードとともに、そういった距離の表現が、数値では計れない彼女の心の成長や別れた相手への想いの期限、そして待ってくれる人との心の距離を感じさせてくれる。 エリザベスを演じるノラ・ジョーンズは、かわいいけれど変な派手さがなくて、演技的にも一生懸命なところが、恋にまっすぐでどこにでもいるような失恋した若い女性のイメージにぴったり。 ウォン・カーウァイの映画といえば、主人公たちの語りが特徴的。 ただノラ・ジョーンズの語りは、個人的にはその歌声ほど印象的ではなかったように思いました。 今回はエリザベスが旅で出会う登場人物たちのエピソードを彼女の目線という1本筋が通った形で描かれ、そして彼女の心情に影響してくるので、全体の流れとしてはわかりやすい。 デヴィッド・ストラザーン演じるアーニーとレイチェル・ワイズ演じるスー・リンのエピソードは、「花陽年華」のような大人の雰囲気。 スー・リンという名前は、スー・リーチェンを思わせるが、監督曰く偶然とのこと。 ナタリー・ポートマンは、ノラ・ジョーンズよりも実年齢は年下だけれど、彼女のほうがお姉さんに見えるのは、俳優としてのキャリアがなす存在感かな。 カフェのオーナーのジェレミーを演じるジュード・ロウは、失恋した女性を包み込むような大人の包容力もある一方で、届いた手紙にはしゃぐ少年ぽさも持ち合わせていて、やはり魅力的。 こうした豪華俳優陣とともに様々な登場人物が描かれているけれど、「恋する惑星」のフェイ・ウォンや「天使の涙」の金城武みたいな、破天荒だけれど愛すべきキャラクターがいなかったのは残念。 全体的にキャラクターもストーリーも、きれいにまとまりすぎている印象でした。 ただ映像に関しては、撮影がクリストファー・ドイルでないものの、映像の色合いやネオンであったり、走る列車など、ウォン・カーウァイらしさは健在。 特にキスシーンはとても素敵で、この映画を象徴する印象的なシーンで心に残りました。 そして冒頭とラストとの対比で、旅を通して自分を見つめ直して前向きになった彼女の心が、明確に伝わってきました。 失恋してもまた恋がしたくなる映画でした。