アメリカを売った男
総合:★★★ 内容:★★★ 俳優:★★★☆ 映像:★★☆ 感想:衝撃的 ・興奮する・知的 まず印象的なのがポスター。 ロバート・ハンセンを演じるクリス・クーパーの年輪を重ねた顔が、一筋縄には語れない裏がありそうな何かを訴えてきそうである。 ロシアにアメリカの国家機密を漏らしているロバート・ハンセンを逮捕すべくスパイとして彼の下へ送られたエリック・オニールの目線で物語は進行する。 実際に本作品では、エリック・オニール本人が特別顧問として参加しているとのこと。 冒頭からして、ロバート・ハンセンの人間としてのとっつきづらさ、スパイの専門家だけあっての徹底した洞察力や身辺管理、本性を現さない徹底した秘密主義や慎重さなどが強く伝わってくる。 映画としては、その鋭さをかいくぐりながら、証拠をつかむべく身辺を調査するというスリル感、ばれないように時間内に行動しなければならない緊張感や駆け引きなどがあって楽しめる。 罪の意識を感じずにはいられなかったのか、熱心なカトリック信者であるロバート・ハンセンの一面がかなり色濃く描かれている。 同様にカトリック信者のエリック・オニールを導きたいという思いが、2人の関係性や信頼感にも関わってくるところが、人間の心理をついたFBIの意図的な作戦な気がしてならない。
そして、最も気になるのが「なぜ彼はアメリカを売ったのか?」というところだろう。 しかし、残念ながらそれは映画の中では明確には語られない。 基本的に周囲からみたロバート・ハンセン像しか描かれていないため、彼が実際に何を考えて行動していたのか?どういう経緯で国家機密を売るに至ったかはわからないため、人物像として表面的であるのは残念。 ただ彼が不満を述べた言葉の中で何度も繰り返されるのが、「FBIは銃社会」という言葉。 たしかに映画やドラマで描かれるFBIの姿は、現場で銃を持って犯人を追いつめる印象。 CIAのような情報局のようなイメージはあまりない。 銃社会のFBIにおいて、情報の価値、そして何よりもそれを専門に扱う自分の価値を認めて欲しかったのかもしれない。 アメリカをスパイする男とそれをスパイする男。 お互いの人間性をだまし合いながらも信頼と疑惑の狭間で揺れる2人の姿が印象的な作品でした。