Dr.Cinema

博士の愛した映画

真夏の方程式

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「全てを知った上で,自分の進む道を選択すべきだ」

決して明かすことが許されない秘密の中,自らの思いだけで起こす行動がもたらした悲劇とは・・・.

本作の見所は,劇場版ならではの人間的な湯川先生.

テレビ版では,事件の背景には全く興味がないと豪語する一方で, 劇場版では,背景にある人々を気遣い,論理的な物理学者ではなく,人間らしい一面が全面に出ている.

テレビ版では利己的な欲望による犯罪が多いのに対し,劇場版では前作「容疑者Xの献身」と同様に, 本作も愛する人を守り抜いて殺人の罪を背負う人々が描かれる.

そんな人たちの前では,湯川先生も感化されてしまうのかもしれない.

そして,2つめの見所は,嫌いな子供との共演. 「聖女の救済」などでも,じんましんがでて,子供にも容赦ない態度だった湯川先生.

しかし,本作では,理科嫌いな子供のために実験に燃える姿は,物理学の研究者ではなく, 子供の好奇心や考え方を育もうとする教育者としての一面が新鮮.

子供との共演という意味では,福山雅治が初の父親役を演じる「そして,父になる」にも期待が膨らむ.

そして,最後の見所は,事件の余韻. 犯罪のトリック的には,天才数学者との対決だった前作と比べると,衝撃的なものではない.

しかし,事件の真相が明らかになった時,今回の事件が残す後遺症のようなものが, 犯罪の代償として罪を背負う必要のない人間に連鎖していく辛く悲しい現実が心に残る.

家族同士お互いを愛するがゆえに,幾重にも重ねられた嘘によって守ってきた秘密がもたらす悲劇が切なく悲しい. しかし,その奥底には父親たちのかけがえのない娘への愛が感じられる作品でした.

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