天使の分け前

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家も職もなく，親の代から続く抗争に明け暮れる毎日． 一方で，100万ポンドの値がつくほどの高価なウィスキーが競り落とされる格差社会．

彼女と生まれてくる子供のため，新しくやり直そうと，もがき，苦しみ，しかし抜け出せない厳しい現実． 主人公ロビーの姿は，とても狭い世界の中で，必死で空回りするネズミのようで痛々しい．

そんな中で出会う社会奉仕活動の指導者ハリー． 単に指導だけでなく，ウィスキーの良さを分かちあいたいというウィスキーへの愛情が伝わってくる．

人生のどん底において，自分のために軌道修正や新たな世界を開いてくれる存在に巡り会えるのは，希少で高価なウィスキーに巡り会うよりも価値があるもの．

社会奉仕活動で出会う仲間たちが少し抜けた感じで，厳しい現実を和ませてくれる． 盗み癖のあるモー，常識はないが天才的なアルバートなど独特の個性をもってして笑わせてくれる．

ウィスキーのテイスティングの才能に開花したロビー． このまま真っ当なサクセスストーリーが続くのかと思いきや，彼が決断する後半の展開が，大胆で非常識で意外な展開． そして，どこか間の抜けた面々を応援したくなる．

世界を広げ，大きく人生を変えるきっかけになる人との出会い． そして，ウィスキーを通して，人と分かちあうことの大切さを教えてくれる．

思わず「あーっ！」と声を上げてしまう驚きと，最後にほろっとくる余韻は，ウィスキーが入ったクリスマスケーキのよう．

ハッピーで芳醇な「分け前」を与えてくれる素敵な作品でした． [cft format="0"]